プロンプトエンジニアリング実践テクニック10選
ChatGPTやGeminiなどの生成AIを使いこなすための、上級者向けプロンプトテクニックを具体例とともに解説します。
ChatGPTやGeminiなどの生成AIを導入したものの、「期待したような回答が返ってこない」「結局、定型的な文章作成にしか使えていない」とお悩みではありませんか?
生成AIの真の価値を引き出し、業務の生産性を劇的に向上させる鍵は「プロンプトエンジニアリング(AIへの適切な指示の出し方)」にあります。
本記事では、株式会社WAKUMAXの生成AI研修でも実際にお伝えしている、ビジネス現場ですぐに使える上級者向けプロンプトテクニックを10個厳選してご紹介します。Before/Afterの具体例とともに解説しますので、ぜひ今日から実務でお試しください。
1. 役割(ペルソナ)の付与
AIに特定の「役割(ペルソナ)」を与えることで、出力の専門性や視点、トーン&マナーを劇的に変化させることができます。
Before(普通のプロンプト)
自社の新しいWebサービスのプロモーション施策を考えてください。
After(ペルソナ付与)
あなたはSaaSビジネスに精通した、歴20年の凄腕BtoBマーケティング責任者です。
以下の条件をもとに、新しいWebサービスのプロモーション施策を立案してください。
「辛口の批評家として」「新入社員にもわかるように」など、目的に応じてペルソナを使い分けることで、AIは優秀な壁打ち相手になります。
2. 背景・文脈(コンテキスト)の共有
AIはあなたの会社の状況を知りません。背景情報を詳細にインプットすることで、一般論ではない「自社にパーソナライズされた」回答を得られます。
プロンプト例
【背景情報】
- 当社は従業員50名の中小製造業です。
- 現場のデジタル化(DX)を進めたいですが、IT専任の担当者がおらず、従業員のITリテラシーも高くありません。
- 予算は年間で最大300万円です。
上記を踏まえ、最初の1年間で着手すべきDXのステップを3つ提案してください。
3. 出力形式と制約条件の指定
出力フォーマット(表、箇条書き、Markdown、CSVなど)や文字数、使用する言葉のトーンを厳密に指定することで、出力結果をそのまま資料やシステムにコピペできるようになります。
プロンプト例
以下の競合他社情報を比較し、Markdownの表形式で出力してください。
【制約条件】
- 表の列は「企業名」「主力製品」「価格帯」「ターゲット層」「強み」とすること。
- 各項目は簡潔に、30文字以内でまとめること。
- 「である・だ」調で統一すること。
4. 具体例の提示(Few-Shot Prompting)
「こういう風に出力してほしい」という見本(正解データ)をいくつか提示することで、AIに文脈やルールを深く理解させるテクニックです。
プロンプト例
以下の例に倣って、顧客からのクレームメールに対する一次返信文を作成してください。
【例1】
顧客:商品が届きません。
返信:この度は商品の到着が遅れており、誠に申し訳ございません。直ちに配送状況を確認し、本日中に改めてご連絡いたします。
【例2】
顧客:届いた商品に傷がついていました。
返信:ご不快な思いをおかけし、深くお詫び申し上げます。すぐに新品の代替品を発送手配いたしました。
【今回の対応】
顧客:使い方が全く分かりません。マニュアルも不親切です。
返信:
5. 思考プロセスの分解(Chain of Thought)
複雑なタスクを依頼する際、AIに「段階的に考えさせる(ステップ・バイ・ステップで処理させる)」ことで、論理破綻を防ぎ、出力の精度(推論能力)を向上させます。
Before
新規事業の売上予測を立てて。
After(Chain of Thought)
新規の法人向けフードデリバリー事業の売上予測を立てます。
以下のステップに沿って、段階的に思考して結果を出力してください。
1. ターゲットとなる都内オフィスエリアの企業数を推定する
2. そのうち、サービスを導入する企業の割合(浸透率)を仮定する
3. 1社あたりの月間平均利用額を算出する
4. 上記の数字を掛け合わせ、初年度の月次売上推移をシミュレーションする
6. 否定的指示(Negative Prompt)
「〇〇してください」という指示だけでなく、「〇〇しないでください」という禁止事項を明確にすることで、AI特有の無駄な出力やハルシネーション(もっともらしい嘘)を防ぎます。
プロンプト例
当社の新製品発表のプレスリリース原稿を作成してください。
【Do Not(避けるべきこと)】
- 専門用語(カタカナ語)を多用しないこと(中学生でもわかる言葉を選ぶ)
- 「業界初」「ナンバーワン」といった根拠のない誇張表現は使わないこと
- 結論を後回しにしないこと(結論ファースト)
7. 変数・テンプレートの活用
プロンプトをテンプレート化し、変動する部分を「変数([ ] や で囲む)」にしておくことで、チーム全体でプロンプトを使い回し、業務を標準化できます。
プロンプト例
以下の情報を元に、商談後のフォローアップメールを作成してください。
---
【顧客名】: [ 株式会社〇〇 山田様 ]
【提案内容】: [ クラウド型勤怠管理システムの導入 ]
【顧客の懸念点】: [ 既存の給与計算ソフトとの連携ができるか ]
【次回アクション】: [ 来週火曜日に技術担当を交えてWebミーティング ]
---
8. 壁打ち相手としての活用
AIに単に答えを出させるのではなく、「自分のアイデアに対する批判的意見(レッドチーム)」を求めることで、企画の抜け漏れを防ぎ、ブラッシュアップを図ります。
プロンプト例
以下の新規事業企画書案を読んでください。
あなたは非常に厳格で、リスク管理に厳しいベンチャーキャピタリストです。
この企画書に対する「致命的な欠陥」「見落としているリスク」「競合に負ける理由」をあえて3つ、厳しく指摘してください。
[企画書の内容...]
9. 対話による反復改善(イテレーション)
一回のプロンプトで完璧な結果を求めず、AIとの対話を通じて徐々にアウトプットを磨き上げていくテクニックです。
対話の流れの例
- 人間: 「若手社員の離職を防ぐ施策のアイデアを10個出して」
- AI: (10個のアイデアを出力)
- 人間: 「アイデアの3番と7番が面白いね。この2つを組み合わせて、具体的な社内制度の設計案を作って」
- AI: (制度設計案を出力)
- 人間: 「もっと予算をかけずにできるスモールスタート版に修正して。表形式で」
10. メタ・プロンプティング
どのようなプロンプトを書けばいいか分からない場合、「AIにプロンプト自体を作成させる」という究極のテクニックです。
プロンプト例
私は営業部のマネージャーです。部下の「提案書作成スキル」を採点・添削するAIボットを作りたいと考えています。
この目的を達成するために、ChatGPTに入力すべき「最も効果的なシステムプロンプト」をあなたが作成してください。
プロンプトには、役割定義、評価基準、出力フォーマットの指定を含めてください。
実践!複数テクニックを組み合わせたプロンプト・フレームワーク
これまでのテクニックを組み合わせることで、以下のような強力なプロンプトを作成できます。これをテンプレートとして保存しておくと便利です。
# 命令
あなたは経験豊富な【1.ペルソナ:人事コンサルタント】です。
以下の条件に従って、【タスク:採用ピッチ資料の構成案】を作成してください。
# 背景
【2.コンテキスト:当社は設立3年目のAIスタートアップで、エンジニア採用に苦戦している...】
# 思考プロセス
【5.CoT:以下の手順で分析・立案してください。1.競合分析 2.自社の魅力の言語化 3.構成案の作成...】
# 出力形式
【3.制約条件:スライドごとのタイトルと要点をマークダウンの箇条書きで...】
# 禁止事項
【6.否定的指示:一般的なベンチャーの「アットホームな職場です」等の陳腐な表現は避ける...】
プロンプトの評価基準
作成したプロンプトが優れているか迷った際は、当社の研修でも使用している以下の「4Cの法則」でチェックしてみてください。
- Clear(明確か): 指示に曖昧な表現はないか?
- Contextual(文脈があるか): 前提となる背景情報は十分か?
- Constrained(制約があるか): 出力形式や禁止事項は定義されているか?
- Constructive(建設的か): AIが段階的に考えられる構造になっているか?
まとめ:AIを「優秀な部下」として育成しよう
プロンプトエンジニアリングは、単なるPCスキルのひとつではなく、「非常に優秀だが、背景を知らない新入社員に業務をディレクションするスキル」と同じです。
これらの10のテクニックを日常業務で意識的に使い、自分なりのベストプラクティスを蓄積していくことで、AIはあなたにとって手放せない強力なパートナーになるはずです。
さらに実践的なスキルをチーム全体に定着させるには?
「テクニックは分かったが、社員が実際に使いこなせるか不安」 「自社の業務に合わせた具体的なプロンプトの作り方を学びたい」
そのような企業様に向けて、WAKUMAXでは「生成AIリスキリング研修」をご提供しています。
- 実務直結型: 参加者の実際の業務課題を持ち込み、その場でプロンプトを作成・改善します。
- 体系的なカリキュラム: 今回ご紹介したようなテクニックを、ハンズオン形式で深く学べます。
- 定着化支援: 研修後のフォローアップで、社内での日常的なAI活用を伴走支援します。
生成AIの導入効果を最大化したいとお考えの担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
